多治見市 小児科 循環器科 アレルギー科 中村こどもクリニック
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麻疹(感染症)

麻疹についてご説明します。
以下の文章は国立感染症研究所より抜粋(http://idsc.nih.go.jp/vaccine/b-measles.html

臨床症状

前駆期(カタル期)

感染後に潜伏期10〜12日を経て発症する。この時期は前駆期(カタル期)とよばれ、38℃前後の発熱が2〜4日間続き、倦怠感があり、不機嫌となり、上気道炎症状(咳嗽、鼻漏、くしゃみ)と結膜炎症状(結膜充血、眼脂、羞明)が現れ次第に増強する。

乳幼児では消化器症状として下痢、腹痛を伴うことが多い。発疹出現の1〜2日前頃に頬粘膜の臼歯対面に、やや隆起し紅暈に囲まれた約1mm径の白色小斑点(コプリック斑)が出現する。コプリック斑は、特異的診断価値があるが、発疹が出現する約2日前に出現し発疹出現後2日目の終わりまでに急速に消失する。また口腔粘膜は発赤し、口蓋部には粘膜疹がみられ、しばしば溢血斑を伴うこともある。

発疹期

カタル期の発熱が1℃くらい下降した後、半日くらいのうちに再び高熱(多くは39.5℃以上)が出る(2峰性発熱)とともに、特有の発疹が耳後部、頚部、前額部より出現し、翌日には顔面、体幹部、上腕におよび、2日後には四肢末端にまでおよぶ。発疹出現は、ウイルス曝露のおよそ14日後である。発疹が全身に広がるまで、発熱(39.5℃以上)が3〜4日間続く。発疹ははじめ鮮紅色扁平であるが、まもなく皮膚面より隆起し融合して不整形斑状(斑丘疹)となる。指圧によって退色し、一部には健常皮膚を残す。融合性があり、発疹は次いで暗赤色となり、出現順序により退色する。発疹期にはカタル症状は一層強くなり、特有の麻疹様顔貌を呈する。

回復期

発疹出現後3〜4日間続いた発熱も回復期にはいると解熱し、全身状態、活力が改善してくる。発疹は退色し色素沈着がしばらく残り、僅かの糠様落屑がある。カタル症状も次第に軽快する。7〜10日後には合併症のないかぎり回復する。

患者の気道からのウイルス分離は、前駆期(カタル期)の発熱時に始まり、発疹出現時を最高として次第に減少し、第5〜6発疹日以後(発疹の色素沈着以後)は検出されない。この間に感染力をもつことになる。予防のための医学的隔離期間は発疹出現後5日までとされている。また、麻疹は学校保健法による第二種伝染病に分類され、出席停止期間の基準は、解熱した後3日を経過するまでである。

主な合併症状

肺炎

麻疹の二大死因は肺炎と脳炎であり、注意を要する。

中耳炎

麻疹患者の約5〜15%に合併する最も多い合併症の一つである。細菌の二次感染により生じる。乳幼児では症状を訴えないため、中耳からの膿性耳漏で発見されることがあり注意が必要である。乳様突起炎を合併することがある。

クループ症候群

喉頭炎および喉頭気管支炎は合併症として多い。麻疹ウイルスによる炎症と細菌の二次感染による。吸気性呼吸困難が強い場合は気管内挿管による呼吸管理を要する。

心筋炎

心筋炎、心外膜炎をときに合併することがある。麻疹の経過中に一過性の非特異的な心電図異常が半数以上に見られるとされるが、重大な結果になることは稀である。

中枢神経系合併症

1000例に0.5〜1例の割合で脳炎を合併する。発疹出現後2〜6日頃に発症することが多い。髄液所見としては、単核球優位の中等度細胞増多を認め、蛋白レベルの中等度上昇、糖レベルは正常かやや増加する。麻疹の重症度と脳炎発症には相関はない。患者の約60%は完全に回復するが、20〜40%に中枢神経系の後遺症(精神発達遅滞、痙攣、行動異常、神経聾、片麻痺、対麻痺)を残し、死亡率は約15%である。

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)

麻疹ウイルスに感染後、特に学童期に発症することのある中枢神経疾患である。知能障害、運動障害が徐々に進行し、ミオクロニーなどの錐体・錐体外路症状を示す。発症から平均6〜9か月で死の転帰をとる進行性の予後不良疾患である。発生頻度は麻疹罹患者の10万人に1人、麻疹ワクチン接種者100万人に1人である。発病までの期間は、麻疹罹患例で平均7年を要し、麻疹ワクチン接種例では平均3年で発病する。麻疹ウイルスの中枢神経系細胞における持続感染により生じるが、本態は不明である。

予防接種

ワクチンによる免疫獲得率は95%以上と報告されており、有効性は明らかである。1997年度厚生省感染症流行予測調査事業による麻疹PA抗体保有状況によると、各年齢層での麻疹抗体保有率は、ワクチン接種を受けていないものは10才頃までに麻疹抗体を獲得し、維持するようになる。これに対して、ワクチン接種を受けている者は、20〜29才の年齢層で低い抗体価を示しているものの、今のところ免疫の持続は良好である。

副反応に関しては、1998年度の厚生省の予防接種後健康状況調査報告書によると、発熱は22.7%にみられ、そのうち38.5℃以上であったものは13.2%であった。しかし、いずれも軽症でありほとんどは自然に消失するが、けいれんが0.4%の頻度で認められ、このうち85%は熱性けいれんであった。また蕁麻疹、接種部位の発赤、クインケ浮腫等のアレルギー反応も認められ、最近では接種後数時間から翌日に出現する発熱あるいは発疹などの遅延型のアレルギー反応の報告が散見される。蕁麻疹の発症は3.0%に認められ、即時型アレルギー反応と考えられる1日以内の蕁麻疹を認めたものは0.4%であった。ごく稀に(100〜150万接種に1例程度)脳炎を伴うことが報告されているが、麻疹に罹患したときの脳炎の発症率に比べると遙かに低い。SSPEの発生も米国の追跡調査ではワクチン既往のない自然麻疹患者では100万人あたり5〜10人であるのに対し、ワクチン接種者では0.5〜1人と1/10の低さである。

現在および今後の問題点

麻疹に対する根本的治療法がないのは過去も現在も同じであるが、麻疹には効果、安全性の優れているワクチンがある。

小児に対するワクチン接種が90%を越える国は発展途上国を含めて多くなりつつあり、欧米では年間数10例程度の発生にまで対策が進んでいる国が増加している。我が国でも麻疹ワクチン導入後その数は著しく減少したが、大流行にまでは至らないものの、ワクチン接種率の低い地域を中心にした地域的な流行がいまだに全国で繰り返され、死亡例を含む重症患者の発生も少なからず見られている。我が国の小児へのワクチン接種率は最近ようやく全国平均で80%に達したが、地域によっては50-60%と低い状況にある。我が国での麻疹の流行は中途半端に抑制された状態であるといえる。そのため、麻疹に感染することもなく、麻疹ワクチンの接種も受けていないまま成長した成人の間での麻疹(成人麻疹)の増加も目立っている。

1歳以下への麻疹ワクチンの接種、成人を含む定期接種年齢を超えた7歳半以上の年代への麻疹ワクチン接種、あるいは小児への麻疹の2回接種など、麻疹対策として医学的にとり得る方法はいくつか考えられる。しかし我が国における現在の制度を活用しかつ有効な方法としてとることができる現実的な方法は、1歳の誕生日を過ぎた子どもたちになるべく早く麻疹ワクチン接種を行い、1歳児の麻疹ワクチン接種率を向上させ、まず麻疹の全体数を抑えることである。

今後の問題点としては、ワクチン接種を受けたにもかかわらず抗体が減弱していくため感染発症するSecondary Vaccine Failure(SVF9)の増加、妊婦麻疹およびそれに関連する新生児麻疹の発生、流行地域への旅行時の罹患・再罹患などが考えられる。さらに、麻疹ウイルスの抗原変異が進み、現行の麻疹ワクチンによる効果が減弱することも将来の問題として考えておかなくてはならない。

これらの問題を早い時期に解決するためには、第一段階としてワクチン接種率の向上(95%以上の達成が必要)によって麻疹の流行そのものをコントロールし、さらに第二段階として適当な時期に麻疹ワクチンを追加接種することにより免疫能を高く且つ長期的に維持する必要性があげられる。またこれと平行し、麻疹ワクチンの改良、開発のための研究を進めることも重要である。

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