川崎病についてご説明します。
川崎病について
昭和42年、当時日本赤十字病院小児科に勤務し、現在は日本川崎病研究センター所長である川崎富作先生が「急性熱性皮膚粘膜淋巴腺症候群」として報告したのが初めてでした。当時、発病から数週間で心臓発作による死亡例が報告されました。
川崎病は主に4歳以下の乳幼児に起きる全身の中小動脈の炎症です。特に心臓自身を栄養する冠動脈を中心に炎症がみられ、その結果、重傷例では動脈瘤ができます。そのため血栓性閉塞、心筋障害による虚血性心疾患により突然死を来すことがあるのです。心臓後遺症がなければ1か月程で炎症は完全に治まり、慢性化することはありません。
致死率は0.3%程度で、同胞発症(1〜2%)があり、数か月、数年後に再発例もあります(2〜3%)。しかし、最近は治療法が進歩し、特にガンマグロブリン大量療法により冠動脈病変の発症を減少することができるようになっています。
しかし、現在のところ原因はわかっておりません。
一時、A郡レンサ球菌感染症による説がでましたが否定されました。口腔内のサンギウスレンサ球菌やビィリダンスレンサ球菌などについては現在も研究されています。そのほかウイルス感染、リケッチア感染、エルシニア感染など、いろいろな研究がありますが、いまだに結論は出ていません。
結局、以下の6症状がそろえば川崎病と規定することになりました。
1. 発熱
38度以上の発熱が5日以上続きます。
抗菌薬は無効で、通常の解熱剤では熱がほとんど下がりません。
2. 四肢末端の変化
急性期には指趾先が赤くなり、手背、足背が腫れます。これは指で押してもあとが残らないため、硬性浮腫と呼ばれます。1週間以後の回復期には爪と指先の移行部から皮膚の皮が剥がれ始め、これは手の平、足の裏では膜のように“ペロン”と剥がれます。
3. 皮疹
胸、腹などを中心に麻疹様、風疹様、蕁麻疹様など不定の皮疹がみられます。
普通は、水ぶくれ(水泡)をつくることはありません。また、BCG接種部位が赤くなるのが特徴的で、これは他の病気ではみられない現象です。
4. 眼球結膜充血
病初期からみられ、4から5日間続きます。眼やにはありません。
5. 口唇、口腔所見
口唇の発赤、充血、乾燥、ひび割れ(亀裂)がみられます。口腔粘膜も赤くなり、舌は表面にぶつぶつが目立ち、いちご舌と呼ばれます。
6. 頚部リンパ節腫脹
両側性の首の痛を伴うリンパ節腫脹がみられます。
川崎病の急性期以降の経過は、後遺症が残らなかった場合には炎症が完全に治まり、徐々に通常の日常生活に戻り、特に運動制限などは不要です。
しかし、後遺症が残らなかったとはいえ、程度の差があるにしろ、冠動脈には炎症が起きたと考えられ、これは成人になれば動脈硬化などの危険因子となり得ると考えられています。
したがって、成人しても定期的な検診は必要であり、高脂血症の予防、喫煙の禁止、運動不足の解消など一般的な生活習慣病の予防に注意することが大切です。
心エコー、心電図などの定期的な検診をお薦めします。
また、急性期に後遺症を残した場合は慎重な経過観察が必要となります。場合によっては心臓カテーテル検査、核医学による心筋のイメージングなどのより精度の高い検査を必要となる場合があります。